
あなたのネタに「なぜ今か」はあるか?

「ナタデココ」を今、提案したら……
情報番組のネタの採用会議で、「街でナタデココのスイーツを見つけたんですよ。取材してみませんか」と提案したとします。
プロデューサーやチーフディレクターが、どんなリアクションをするかわかるでしょうか。
おそらく口をついて出てくるのは「何で今、ナタデココなんだよ!」といったツッコミです。
若い方はご存じないかもしれませんが、ナタデココとは、フィリピン発祥のデザートで、原料となるココナッツミルクにナタ菌を加えて、発酵させて作るもので1993年頃、一大ブームを巻き起こしたスイーツ。
食物繊維が豊富なため女性たちを中心に大きな話題となりました。
たしかに四半世紀も前に流行ったスイーツを今、取り上げる意味がわかりません。しかし、「何で今、ナタデココなんだよ!」と突っ込まれたあとに、こういえば違ってきます。
「大ブームを巻き起こしたタピオカも1992年頃、一度流行ってその後、下火になったものがブームとして再燃しました。ですからポスト・タピオカを探る切り口で、ナタデココを取材してみるのです」。
これなら、今、放送する意味が出てきます。
テレビマンは「なぜ今、それを放送するのか」を自覚すれば、途端にそれを多くの人に伝えたくなる習性を持っています。ですからあなたがテレビに提供する情報にも、「なぜ今、そのネタなのか」をはっきりと示しておかなければなりません。
「世界ふしぎ発見!」で万葉集をテーマにしたことを前述しましたが、これも新元号「令和」の出典元となったからでした。そうでなければ映像的に地味で、ともすればお勉強チックになってしまう万葉集を取り上げることはなかったはずです。
ネタ出し会議でも「確かに面白いけど、なんで今、それなんだよ」といわれて応えることができず、ボツになるケースが多々あります。
以下を参考してあなたの商品を「なぜ今、テレビが取り上げるのか」を考えてみてください。
「なぜ今か」のさまざまなスパン

「なぜ今か?」の「今」には、さまざまなスパンがあります。
「日にち」単位でいえば「祝日や記念日」を意識して採用されるネタもあります。
「来月2月14日がバレンタインデー」だとしたら、チョコレートの最新トレンドや、変わり種チョコレートといったネタ、あるいはおすすめデートスポットのようなネタが採用されやすくなりますから、事前にそれらにちなんだ情報を番組に送っておけば採用される確率が高まります。
ちなみに1年365日すべての日に何らかの記念日が存在します。
ネットで調べれば簡単に出てきますので、自分の商品をからめることができる記念日を探してアピールすることが可能です。
たとえば、5月3日は憲法記念日であると同時に、「ゴミの日」でもあります。
あなたが清掃関連グッズを扱っているのであれば、「5月3日はゴミの日!らくらくお掃除グッズ特集」を提案するかたちで、自身の商品を情報提供すればよいでしょう。
「日にち」より、もう少し長いスパンでいえば、春夏秋冬に加えて「正月」「卒業シーズン」「花見」「ゴールデンウィーク」「お盆休み」「紅葉シーズン」などがあります。
キャンプ用品を扱っているのなら、「ゴールデンウィーク」や「夏休み」を意識したアプローチをする。墓掃除の代行サービスをやっているのなら、お彼岸やお盆、正月前を意識したタイミングでアプローチして「なぜ、今か」をアピールしてください。
世相やブーム、トレンドも「なぜ、今か」
世相や話題、ブーム、ニュースも「なぜ、今か」に絡められます。働き方改革や副業解禁、消費増税といった世相や話題、さきほど例に挙げたタピオカやインスタグラムといったブームに、あなたの商品をからめることができないでしょうか。
まだそれほどブームが盛り上がっていなくても、その兆しが多少なりともあるならば「密かなブーム」としてアピールすることができます。
マスコミがまだ気づいていない、あなたの業界の最新トレンドをテレビマンに教えてやるのもあり。
「お取り寄せグルメの世界では、今〝冷凍パン〟が大人気」などと教えてあげるのです。実際に売上が上がっているデータを添えてあげると、テレビマンは「へえ、そうなんだ!」と食指を動かすことでしょう。
ニュースもそうです。
あおり運転が連日、マスコミに取り上げられていたころにはドライブレコーダーの売上が急増しただけでなく、アンガーマネジメントグッズにも注目が集りました。仮にあなたの商品が人に癒しを与えるものならば、その波に乗ってアンガ―マネジメントグッズとしてアピールすることが可能だったのです。

「東京五輪」もそうです。
スポーツとはまったく関係なくても、来日外国人向けの商品やサービス、猛暑対策グッズ、五輪に紐付けたグルメなどは絶好のPRチャンスなのです。
自社都合の「なぜ、今か」はNG
ニュースを始めとする時代の空気に絡められれば、普段は採用されにくいネタも採用されやすくなります。
テレビマンは、よく「お、タイムリーなネタだね」といいます。
「なぜ、今か」が明確なネタは、得点を挙げる野球のタイムリーヒットのようなもの。
テレビ番組においても得点=視聴率をあげやすいネタといえるもの。だから伝えたくなるのです。
気をつけていただきたいのは、「なぜ、今か」が自社の都合に終わらないことです。
「弊社が創業10周年だから」とか「今度、新しい商品を発売するから」、「○月○日をもって今度、××社と業務提携することになったから」といった、あなたにとっての「今」は、あくまで自社都合であって、視聴者にはまったく関係ありません。
それではテレビマンが伝えたいとは思わないでしょう。
「公共性」とも多いに関連してきますが、「なぜ、今か」は、視聴者が「なぜ、今、これを放送しているのだろうか」、納得できることが大切なのです。