
コラム:「画になる」とは、どういうことなのか?
更新日:2020年4月9日

以前、「世界ふしぎ発見!」で、オーストラリア中央部にそびえるウルル(エアーズロック)をテーマに放送したときのことです。
ウルルといえば高さ349メートル、周囲9・4キロメートルの世界最大級の巨大な一枚岩で、年間900万人が世界中から、その雄大な姿を一目見ようと訪れる世界自然遺産です。
当然、「画(映像)になる」はずと思われるかもしれません。
しかし、いかんせんウルルは動きません。しかもウルルは、先住民アボリジニの聖地のため、撮影できないアングルもあります。
ですから撮影できるのは、許可された場所からのみ。まったく画変わりしないため、それだけでは10秒と持ちませんでした。
ディレクターは、タイムラプスを使って、日の出から日の入りまでのウルルの表情の変化を撮影してみたりするなど、さまざまな演出上の工夫をしましたが、それでも限界があったのです。
動きのある映像を撮影するには、ミステリーハンター(レポーター)にウルルに登ってもらうといったやり方もあります。
しかし、その回のテーマが「先住民アボリジニの聖地であるウルルに観光客が登るのは、いかがなことなのか」といったことを訴えるコンセプトでしたので、ミステリーハンターの女性を登らせるわけにはいきません。
結局、ウルルが登場したのは最初のほうだけで、あとは先住民アボリジニの人々の暮らしぶりや、彼女たちが描くアボリジナルアートを紹介したりするしかありませんでした。
ウルルのように動かない撮影対象は「出落ち」と呼ばれます。
「出落ち」とは、本来、お笑い用語で、登場した瞬間に、爆笑をとってその後が続かないことを意味します。
ウルルも最初に「すごい!」と思わせた後の展開がない、つまり画変わりしないため視聴者に新たな視覚情報を与えることができません。
だからこそ10秒以上は持たないのです。
速読の達人が0・1秒で1ページをめくり続けていたら、視聴者は確かに最初に驚くことでしょう。
しかし、そのインパクトの持続時間は、せいぜい10秒。新たな視覚情報がないため、それ以上は持ちません。
いわゆる「インスタ映え」もそれと同じ。
見た瞬間だけにしかインパクトがなく、動きや変化がないものは「出落ち」でしかありません。
「画になる」とは、瞬間のインパクトではありません。視聴者が飽きずに見続けていられる要素があることが大切なのです。
強い画=心が動く映像

ここまで何度か、テレビで「画になる」とはどういうことなのかを述べてきましたが、他には、単純に「美しい」「きれい」「かわいい」「かわいそう」といった、人の心を動かす対象物も画になります。
この場合は、映像より、むしろ見ている視聴者の心に動きがあるのでしょう。
赤ちゃんや猫の寝顔をずっと見ていられるのは見ている人の心が動くためです。
ここまでお読みいただいた方は、もうおわかりになったかもしれませんが、結局のところ、「画になる」とは、映像によって「見ている人の心が動くかどうか」に集約されるのです。
人の心を動かし続ける熱量が高い映像ほど、画になる映像です。
より多くの視聴者に楽しんでもらうには、1000の理屈より、人の心を動かす十数秒の高カロリーな映像のほうが大切だとテレビは考えます。
プレスリリースを送るあなたも、よりそのことを強く意識すれば取り上げてもらえる確率がより高くなるはずです