テレビPRのまことしやかな嘘と真実

私が2014年に初めて、本を出版したときのこと。元書籍編集者の女将が切り盛りする銀座の小料理屋のカウンターで、出版プロデューサーを名乗る方と同席したことがあります。



自称出版プロデューサーは、私の職業が放送作家であることを知らず、女将との会話から私が本を出版したことを察して、次のようなアドバイスをくれました。


「出版されたのですか。本を売るには、やはり、テレビで紹介されるのが一番ですよ。テレビ東京の経済報道番組にルートがありますから、もし、よろしければ30万円で売り込みましょうか」


あたかもお金を支払えば、番組出演が実現するかのような口ぶりです。


しかし、その経済報道番組は、視聴〝質〟が高く、多くのビジネスマンが視聴することで知られるもの。そこで自社の商品が紹介されることを願って多くの広報マンがプレスリリースを送ることで知られています。


そうした番組がもっとも大切にするのは、視聴者からの信頼です。


「お金を払えば出演できる」のであれば、視聴者の信頼に対する最大の裏切り行為となるでしょう。テレビ東京に限らず、地上波キー局の報道番組が対価を受け取って取材対象を出演させることはありえません。


もちろん、どんな番組であろうと情報提供は大歓迎。後ほどくわしく説明しますが、一般の方々からの情報提供は、いつだって歓迎しています。


ですから自称出版プロデューサーが売り込む=企画を提出することも不可能ではありません。ただし郵送での情報提供であれば切手代くらいしかかかりません。30万円もの対価を請求するのは、少し違うのではないでしょうか。


テレビ番組への出演が、大きなメリットをもたらすことは前述のとおりです。ただし、そこに目をつけて詐欺まがいの誘惑を仕掛けてくる人物が少なからず存在することも事実です。


あなたは、このような詐欺まがいの手口に決してひっかからないようにしてください。そこで巷間、ささやかれているテレビ出演に関する嘘と本当のいくつかを、この章の最後にご紹介しておきます。


テレビPRの嘘と本当



まず「テレビ出演には、お金が必要」といったことが誤解であることは、ペイド・パブリシティを除いて、事実でないことはあらためて強調しておきます。


ペイド・パブリシティとは、「タイアップ」とも呼ばれるもので、読者・視聴者用のプレゼントとして商品を提供して露出させる「プレゼント・パブリシティ」や、ドラマなどで女優さんにアクセサリーや洋服を身につけてもらう「プロダクト・パブリシティ」といった、さまざまな種類のものがあります。


もし、あなたがペイド・パブリシティで商品をテレビに露出させたいのであれば、PR会社にお願いすれば、数十万~数百万円の予算で、そのための枠を紹介してもらえるはずです。


「300万円払えば、あの人気番組で特集される」といった噂を耳にしたこともあります。


もしかしたら、私が関わったことがないだけで、そうした番組があるのかもしれません。


しかし厳密にいえば、ステルスマーケティングのように、対価をもらったうえで、視聴者に広告とわからないよう、特定の商品や企業を紹介して宣伝することは放送法に抵触する可能性があります(放送法第十二条「放送事業者は、対価を得て広告放送を行う場合には、その放送を受信する者がその放送が広告放送であることを明らかに識別することができるようにしなければならない」)。


そうした話を持ちかけられてテレビに出演した場合、それが発覚して問題となれば、(実際に東北の地方局が「ある健康食品メーカーから対価をもらったうえで健康番組を制作した」と週刊誌に報じられ、BPO=放送倫理・番組向上機構が調査に乗り出す問題となったこともありました)企業イメージやブランドに傷がつくリスクがあることも、危機管理の一環として頭に入れておいてください。


テレビ出演に「コネ」「人脈」は必要なし


「テレビ出演にはコネや人脈が必要」も正しくありません。実際のところ、コネやつながりで優秀なテレビマンがネタを採用することはありません。


なぜならテレビマンにとって、もっとも大切なのは、いかに視聴者にとって有用な番組をつくり、視聴率をとるかだからです。


頼まれたからといって、数字の採れないネタを無理筋で通しても、自らの評価が下がるだけの結果になりかねません。


ちまたのPR本のなかに「テレビでPRするには、放送作家やリサーチャーに売り込むといい」と書かれているものがあるそうで、それを読んだのかどうか、私のもとにも売り込みがきた時期がありました。


しかし、当時、私が担当して番組には明らかに使えそうにないものばかりでしたので、すべてお断りさせてもらいました。


親しい知り合いから「これ、テレビで紹介できないかな」と頼まれることもあります。しかし、そのときは内容をうかがったうえで、難しいものに関しては正直に「厳しいと思いますよ」といいますし、微妙なものであれば、「これは知り合いに頼まれたネタですが……」と断わったうえで企画会議に提出しています。


それは「こんな微妙なネタを面白がっている、駄目な放送作家」と思われてしまわないようするためです。


人脈が効果を挙げるとしたら、ほとんど同じようなネタが2つあって、どちらにしても視聴率は大して変らないように思えるような場合に限られるのではないでしょうか。


テレビ出演のための「究極の大原則」



「テレビの内部はブラックボックスで、どのようにしてネタが採用されるのか、よくわからない」といった声を耳にします。


実際のところ、番組によって企画会議の中身もかわってきます。どういうネタを採用するかも、番組のコンセプトによってかわってくるでしょう。だから明確な採用基準がわからないといった声は理解できます。


しかし、テレビを作っているのは、きわめて普通の感覚を持った人々です。視聴者に近い、ごくごく普通の感覚がなければ、面白い番組をつくることはできません。テレビ番組はアートではなく、不特定多数の視聴者に共感してもらうことでしか見てもらえないメディアだからです。


ネタが採用されるコツについて、くわしくは後で述べますが、究極の大原則を1つだけ覚えておいてください。それは、どんな番組であろうと、その番組の「視聴者が面白いと感じる企画が採用される」ことです。


その大原則さえ押さえておけば、テレビにネタを採用されて出演することは、難しいことではありません。


まずは「宣伝のためにテレビに出演する」といった考えをいったんリセットしてみましょう。


そうではなく「自分の商品が、どんなふうに視聴者にとって有用な情報となって、喜んでもらえるか」を考えるのです。


テレビ出演で認知度や売上が上がるのは、あくまで「結果」です。頭を切り換えるのは簡単ではないでしょうが、まずは、あなたの商品が、社会とよい関係を築くにはどうすればよいかを考えてください。

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